ジョン・ル・カレ伝 下巻 読書感想

下巻は上巻と打って変わり、文章も内容も面白くなっています。ル・カレの記憶がより詳細なのかもしれませんし、訳者がこなれてきたからなのかもしれません。
 

以下抜粋

P73
ストーリーに入るのはできるだけ遅いほうがいいと思っている。入るのが遅くなればなるほど、読者はすぐに引きこまれるからだ。

P75
デヴィットはプロの作家であり、出版社や担当者にも同じプロ意識を求める。-自分自身と周りの人すべてに対する彼の基準は、最大限の厳しさです。外務省で訓練されましたから、
そのレベルで機能する世界を望みます。彼はどんなことでも些細な点まで気にします。遅刻や不正確を嫌い、あらゆることを二重に確認し、
最後まで追求します。あらゆる人の努力にもかかわらず、物事がうまくいかなかったときの準備もしています。

P135
スマイリーは修道院です。異なる時代や方式でつくられ、宗教さえ異なるかもしれない。それらすべてが調和しているとはかぎりません。

P163
この本の目的は「敬意なのか、償いなのか、復讐なのか」と考えた。

P212
ふたつの超大国は”先制攻撃”と呼ばれる奇襲を受けても相手を破壊するだけの報復力を保持してきた。これが究極の核抑止力であり、この相互
確証破壊の原理が(擁護者によれば)冷戦期の平和を維持してきた。したがって、この能力を疑問視するのは双方にとって非常に不穏なことだった。
P219
「ヨシフ、今でなければ、いつだ?」と訊いた。「どこかで人生を祝わなければならないだろう」

P234
脚本が長すぎると批判さえたストッパードは、小さな文字で印刷するという方法で対処した。

 

読むとル・カレの作品をより楽しめること請け合いです。

読んでよかったです。